~経営指標をもとに、安定的に儲けているか、人件費に問題がないかを確認しよう~

「自己資本比率」から安全性を分析

自己資本比率は、「総資本」に対する「自己資本」の割合をみたものです。銀行の安全性を示す指標としても使われているので、耳にしたことがある人も多いでしょう。自己資本は貸借対照表の右下にあります。この数値が高いほど安全性が高い、つまり会社がつぶれにくいといえます。

なぜ自己資本比率が高いと安全なのでしょうか。貸借対照表の右側をみるとわかりますが、自己資本が多いということは、その分借入金が少ないことを意味します。借入金が少なければ金利負担は少なくて済むのです。

また自己資本には、会社に最終的に残った利益(損益計算書の「当期利益」)が組み込まれていきます。利益が多いと、その分自己資本も増えます。利益をたくさん上げれば自己資本が増えるので、儲かっている会社の自己資本比率は高くなっていくのです。

「安全余硲率」から安定性を分析

売上高から損益分岐点売上高を引くと、会社にそのまま残る利益額を出せます。いわゆる〝余裕利益″が売上高に対してどれぐらいあるかを示すのが安全余裕率です。
この数値が大きいほど、不況にも左右されにくい体質の会社といえます。5%以上というのが健全な数値です。

「労働分配率」から生産性を分析

固定費の中で多くの比率を占める人件費に注目し、限界利益(損益計算書の「売上総利益」で代用)の中でどれぐらいの比率なのかを表すのが労働分配率です。

限界利益は売上から変動費を引いたものです。そこで人件費が多くを占めれば、その分会社に残る利益(営業利益や経常利益など)は減ってしまいます。たとえば労働分配率が70%だと、限界利益のうち70%が人件費ですから、会社には30%しか残りません。

労働分配率が高いほど労働力を活かすことができていないし、低いほど労働力を効率的に活用しているということです。

労働分配率が高すぎず、なおかつ社員一人あたりの給与が高いという会社は、それだけ収益力が高いということになり、理想的な姿なのです。

Point
自己資本比率と安全余裕率は大きく、労働配分率は小さいほうが望ましい。
経営のヒント
固定費削減には時間短縮を!

固定費は人件費のほか家賃や水道光熱費などがあります。
「固定費を削るにはどうしたらよいですか?」という質問に、大抵は人件費を削るしかないという答えが返ってきます。なかには、電気をまめに消すなどという答えもありますが、どちらも利益を上げることにはつながりません。

私はこのような場合、「時間軸を考えなさい」とお答えしています。
つまり1日かかっていた仕事は、半日で。半日の仕事は2時間でというふうに、人がかかわる仕事のスピードを上げれば、必ず利益率がよくなります。

2012年 5月 6日

~経営指標をもとに、会社は稼いでいるのか、資金の心配はいらないのかを把握しよう~

「総資本経常利益率」から会社の収益性を分析

収益性とは、「元手に対してどれだけの利益を得ることができたか」ということです。会社の元手となるお金をすべて合計したものは「総資本」で、貸借対照表に「負債・純資産合計」として載っています。総資本に対して得られた利益の比率が大きいほど、収益性が高いことになります。ここでは営業外利益と営業外費用も算入した「経常利益」を使って、総資本に対してどれだけ利益があるのかをみます。

もし総資本経常利益率が1%未満だったら、元手をほとんど有効活用していない状態です。少なくとも元手に対して市中金利以上の利益を上げられなければ、会社を経営する意味がないといっていいでしょう。

総資本経常利益率は、一般的な企業では5%前後であれば普通といえます。

ただ、すべての経営指標にいえることですが、どの程度の数値が適正値なのかは業種や会社の規模によっても違ってきます。

「流動比率」から資金繰りの状態を分析

流動比率は、会社の健全性や資金繰りの状態をみるのによく使われます。内容は、「流動負債」に対する、1年以内に現金化できる「流動資産」の割合を示したものです。流動資産は「現金預金」「受取手形」「売掛金」などの当座資産と「棚卸資産」を合計したものです。流動負債は「支払手形」「買掛金」「短期借入金」などの合計です。

この数値が大きいほど、手元にある運転資金が多く、債務を返済する能力が高い会社となります。200%以上、つまり流動資産が流動負債の2倍以上なら、債務を2回返す余裕があるということです。

一方、100%を切ると負債の方が多くてこのままではキャッシュフローがショートする可能性が大きく、お金を補充しておかなければなりません。

さらに余裕資金について厳しくみたのが「当座比率」で、流動資産に対する当座資産の割合を出したものです。当座比率が100%以上あれば当座の資金面の心配はないでしょう。

Point
収益性は「効率よく稼いだか」、資金性は「返済能力があるか」を示す
経営のヒント
売上利益率でも収益性は見える

会社の収益性をみるし指標は、総資本経常利益率だけではありません。
売上に対する利益の比率でみることもできます。

たとえばA社が売上100億円で1億円で2000万円の利益があったとします。
一方、B社は売上1億円で2000万円の利益がありました。どちらが効率よく儲けたかは、利益を売上で割ればわかります。それが売上利益率です。

A社の売り上げ利益率は1%、それに対してB社は20%ときわめて効率よく稼いでいます。
A社は利益を得るために、経費をかけ過ぎている状態といえます。

2012年 5月 6日

~貸借対照表と損益計算書の数字から指標となる数値を算出する~

会社をみるポイントを知ろう

経営計画を考えるとき、決算書に記されているさまざまな数字の中で、どれに注目したらいいのでしょうか。
本書では 「収益性」「資金性」「安全性」「安定性」「生産性」の5つのポイントに注目します。そのポイントについてわかりやすく示す経営指標(数値)は次のとおりで、これらをみれば会社の体力がわかります。

1. 「収益性」 → 総資本経常利益率をチェック
効率よく儲けているかがわかる

2. 「資金性」 → 流動比率をチェック
返済能力に問題はないかがわかる

3. 「安全性」 → 自己資本比率
つぶれないだけの体力があるかがわかる

4. 「安定性」 → 安全余裕率をチェック
安定的に収入を得ているかがわかる

5. 「生産性」 → 労働分配率をチェック
人件費に問題はないかがわかる

それぞれのポイントについては、次からの項目で詳しく見ていきます。

どれも簡単に計算できる

これらの経営指標の算出方法は、左の図に示したとおりです。

たとえば収益性を示す「[1]総資本経常利益率」は、損益計算書の「経常利益」を「総資本」で割ったものです。「総資本」は貸借対照表の一番下の右側の「負債・純資産合計」(=「資産合計」) のことです。

資金性を示す「[2]流動比率」は、貸借対照表の左上にある「流動資産」を、右上にある「流動負債」で割ったものです。

安全性を示す「[3]自己資本比率」は、貸借対照表の「自己資本」を「総資本」で割ったものです。

安定性を示す「[4]安全余裕率」は、損益計算書の「売上高」から「損益分岐点売上高」を引いたものを「売上高」で割ります。損益分岐点売上高は、売上高とかかった費用がゼロの地点をいいます。

生産性を示す「[5]労働分配率」は、損益計算書の「人件費」を「限界利益」で割ったものです。限界利益は後の項で説明しますが、ここでは損益計算書の「売上総利益」とほぼ同じと考えておいてかまいません。

Point
5つの経営指標を出すのに、決算書のどの数値を使うのか知っておこう。

2012年 5月 6日

~[1]-[11]の指標はとても大切なので、把握した上で対策を考えよう~

経営に負担をかけているのは何かを把握しよう

決算書の数字を利用すれば、[1]-[11]のことがわかります。どれも会社の状況を把握するために大切なものなので、活用をお勧めします。

[1] 預借率
借入金・割引手形に対する現金預金の割合。会社経営にとって重要な現金預金と借入金のバランスをみます。借入金を返せない危険性を判断するものといえます。
[2] 売掛金の回収日数
1日の売上高に対する期末の売掛金残高の割合。売掛金の回収にどれぐらいの日数を要しているのかをみます。売掛金の回収日数が長いほど資金負担がかかるだけでなく、不良債権化する傾向にあります。
[3] 在庫日数
1日の売上高に対する期末の在庫額の割合。在庫日数が長くなるほど不良在庫になります。また在庫が増えることは資産が増えることになるので、金利負担増を招きます。
[4] 借入金対売上高比率
売上高に対する借入金の比率をみます。借入金が適正水準かどうかを知るためにチェックします。
[5] 年間必要売上高
販売費および一般管理費(固定費)をまかなうために必要な、売上高の最低水準を知ることができます。
[6] 現金預金比率
売上高に対する現金預金の比率を出し、1カ月ごとにその推移をみます。現金預金の推移を知ることが経営には必要です。
[7] 売上総利益率
売上総利益が売上全体にどれだけの比率を占めるかをみます。経営が健全かどうかを知る上で非常に大切な指標です。
[8] 一人あたりの月間人件費
従業員の増加や賃上げなどによって人件費が増加すると、固定費の増加と売上総利益の圧縮につながるので、人件費の変動は毎月追いかけるようにします。
[9] 役員給与推移
たとえば、四期分を比較した場合、役員給与の増減があるか、あるいは未払いになっていないかどうかも把握する必要があります。
[10]仮払金
決算書に仮払金が残っていたらおかしいと考えます。もし計上されていたら、その中身を確認した上で決算書を見直さなければなりません。申告をお願いしている税理士さんからの指導がなければ、我理士さんを変えた方がいいかもしれません。
[11] 貸付金推移
貸付金がある場合は、誰に貸したものなのか、返済の見込みがあるのかどうかを常に確認します。回収見込みのない貸付金は、税理士さんに相談して対応しましょう。
Point
決算書の数字から、会社の状況について重要な改善すべきポイントがわかる。

2012年 5月 6日

~貸借対照表の各勘定科目についても、四期分の推移を把握しておこう~

まず純資産の増減を確認する

四期分の貸借対照表については、左の図のようにまとめるとみやすくなります。一番右には前期に対する当期実績の増減分を入れ、数字の増減をみやすくします。

さて、主な勘定科目について、数字の見方を簡単に説明していきます。

[ 1 ] 純資産の推移

最初に、純資産の増減を見ます。
純資産は資本金、資本剰余金、利益剰余金の合計で、借金と違って返す必要のない資金(自己資金)です。中小企業では増資をする場合はほとんどないので、利益剰余金、つまり会社に最後に残った前期の利益が増えたときに純資産も増えます。よって、純資産が増え続けていれば、利益を出し続けていることになります。
一方、純資産が減っていれば、損失が生じていることになります。過去の利益や資本金を取り崩して返済にあてている状態ですから、これが続くと自己資本が減り続けます。最後にゼロかマイナスになれば、実質的に破産状態です。

[ 2 ] 現金預金(運転資金)の推移

一般的に中小企業では現金預金が主な運転資金となります。現金預金の残高をみると、経営状況も把握できます。極端な話、現金預金がゼロになると会社経営はできません。
現金預金が少なくなる理由として、売上が増えていない、変動費や固定費がかかり過ぎている、売掛金を回収できていない、買掛金の支払いに追われている、借入が多額で利息の負担が大きいなどのケースが考えられます。
売上や利益と関係なく、資金バランスの関係で現金預金が少なくなる場合もあります。
もちろん運転資金は減っているよりも増えている方がいいので、金額だけでなく増減もみます。前期より大きく減っていたら、原因を確かめるようにします。

[ 3 ] 借入金の推移

借入金が増えるということは、利息返済額も増えるということです。現金預金が減少する理由になるので確認しておきます。

[ 4 ] 売掛金・買掛金の推移

売掛金の増減は、損益計算書の売上高とあわせてみます。売上が伸びれば売掛金も増えるのが普通ですが、回収が遅れた結果として売掛金が増えると、現金ショートにつながる危険があります。
買掛金も損益計算書の仕入とあわせてみます。仕入が増えれば買掛金が増えるのが普通ですが、支払いが滞っているのなら問題です。
なお支払手形についても、買掛金と同様のことがいえます。

[ 5 ] 棚卸資産の推移

売上や利益がそれほど変化していないのに棚卸資産が増えていたら、デッドストックになっている可能性があります。在庫状況を確認しましょう。

Point
純資産、現金預金、借入金、売掛・買掛金、棚卸資産の四期分を比較しよう。
Point純資産、現金預金、借入金、売掛・買掛金、
棚卸資産の四期分を比較しよう。

2012年 5月 6日

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