~カリスマ性のある経営者なら、経営理念はいらないかもしれないが……~

社長の熱き〝思い〟を示すのが経営理念だ

経営計画の中に必ず入れるべきものに「経営理念」があります。
しかし、まわりの人に「経営理念って何ですか?」と聞いたら、全員から違った答えが返ってくるでしょう。それぐらい経営理念についての認識はあいまいなものです。
実際に「経営理念なんて必要ないよ」という社長さんもいるでしょう。
経営理念とは、社長の熱き思いを言葉にすることです。言い換えれば、たとえ状況が変化しても変わることのない、企業活動の基本となる考え方を表したものです。
実際に経営理念がなくても、機能している会社はたくさんあります。
たとえば社員がせいぜい数人程度、あるいはメンバーの入れ替わりもなく、十年一日の如く同じことをしているような、成長しなくてもやっていける会社です。
長年の経験からメンバーの意思統一もとれているのなら、経営理念を文字にする必要はありませんが、残念ながらそのような会社はまれだといえるでしょう。

「カオス」の状態を脱するには

社長が強烈なカリスマ性のもち主であれば、社長本人が生きた経営理念をいつも示しているようなものです。創業経営者にこのタイプが多いようです。
ただしカリスマ性は特殊能力で、なかなかもち合わせている人はいません。よって、カリスマ性のない経営者が目の前の仕事にばかりに集中していると、社員がバラバラな方向を向き始め、違うことを考えるようになってしまいます。この状態を「カオス」(混沌)といいます。
しかし経営理念が明確になっていれば、社員を同じ方向に向かせることができるのです。
たとえば、お客さんに不便をかけても目先の儲けをとるのか、お客さんの利益を選ぶのかという局面に立ったとします。そんなとき、経営理念に「顧客第一主義」とうたってあれば、社員は迷わずお客さんの利益を選ぶことができるのです。

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  • 2012年 5月 6日

    ~経営計画は、社長が一人で作って社員に押しつけてもうまくいかない~

    経営計画づくりには社員会員が参加する

    年度はじめに社長が経営計画を大々的に発表し、さあ、このとおりに動け―というようなケースを聞くことがあります。一方的に押しっけられた社員は反発するか、いわれたとおりやればいいんだろうと自分で何も考えないまま行動する。配られた経営計画の中身もろくにみない。これではせっかく経営計画をつくっても、目標達成はむずかしいでしょう。
    なかには経営計画を社員に毎朝読むことを強制したり、中身を把握していない社員に対してはマイナス査定を考える社長もいます。しかし、それでは本末転倒です。社長がいわなくても、社員がおのずと経営計画をみるようにならなければなりません。
    なぜ失敗したのか。社長が一人でつくってしまったからです。社員も一緒に経営計画をつくれぼいいのです。それによって社長と社員全員が経営計画を共有することができ、その目標を達成したときには、喜びを分かち合うことができるのです。

    全体目標は社長が決めるが……

    経営目標の達成のために、実際に行動するのは社員です。その社員が計画を立て始めるところからが、経営計画づくりの本番です。
    といっても、社長をさしおいて社員が利益目標を決めるようなことはあり得ません。会社全体の目標となる数字目標や戦略目標は、社長が決めて社員に示します。
    社長が決める戦略は、利益目標などの数字目標設定以外に次の項目が挙げられます。

    ・来期はこの商品でいく
    ・次にこのエリアを開拓する
    ・顧客夕-ゲットはここを狙う

    細かな行動計画を示してもあまり意味がありません。必ずわかりやすい目標や戦略を示すようにします。
    部門長や社員はこれらをもとにして、部門や個人の目標数値や行動計画を決めていきます。そして、自分で決めた目標を達成しようとする社員に対して、社長は全力で支援することを約束します。ここで大切なことは、実際に社長自らが社員をバックアップしていくことです。そうすれば、社員のやる気を引き出すこともでき、一石二鳥となるでしょう。

    Point
    経営計画の共有=達成感の共有。社員と計画をつくり、喜びを共にしよう。
    経営のヒント
    なぜウサギはカメに負けたのか?

    有名なイソップ童話『ウサギとカメ』で、なぜウサギはカメに負けたと思いますか?

    ウサギは慢心し、カメは前進し続けたから勝つことができたと考えるのが一般的です。
    しかし、ウサギとカメの最も大きな違いは、ゴール=目標をみていたかどうかです。カメに負けるはずがないと思ったウサギは、カメを見てゴールを見ていなかったのです。

    会社も同じこと。目標(経営計画)がないと、社員はどこに向かって進んでいいのかがわからないのです。ゴールを見失った社員が前に進むのをやめないよう気をつけましょう。

    2012年 5月 6日

    ~予算とともに行動計画を決め、定期的に見直そう~

    計画と実績のずれをチェックする

    船は航海をするのに航路がわからなかったら困ります。位置関係を把握できるナビゲーションシステムがあってはじめて、航路を見失わずに運航できるようになっているのです。
    同じように、企業活動をナビゲートしてくてれるが「経営数値」になります。経営数値をみることによって、自分の今いる位置がわかるからです。経営数値がナビゲーションシステムで得られる位置情報とすれば、経営計画は海図に描かれた予定航路です。予定とのずれをチェックして軌道修正をすることで、船は目的の港に到着できるのです。企業も同様に、計画とのずれをチェックし、修正しなければなりません。
    ところが、せっかく経営計画をつくっても、発表しただけで終わりとか、社長一人が予算だけつくって手帳に書いて終わりなどという例が少なくありません。経営計画を社内で発表したら、社長はもちろん、社員全員がそれをいつも確認するべきです。ずれや迷いが生じたときには、常に経営計画に立ち戻るようにしましょう。

    数字目標は行勤計画に落とし込む

    経営計画の中で、数字の予定計画が「予算」です。そして予算に対する「実績」を確認するのが「予実管理」です。「経営計画を立てたら、その後で予算と実績の細かい数字まできちんとつき合わせてみている。つくって終わりではない」という社長もいるでしょう。
    もちろん、予実管理は大切なことです。しかし、もっと大切なことは、予実管理を今後の経営に活かすことです。数字をつき合わせて終わりでは意味がありません。
    また、数字目標(予算)は経営計画のすべてではありません。その結果、目標どおりの利益を生むために社員がどのように行動するのかを掲げた「行動計画」も必要です。
    社員自身によるセルフチェックだけでなく、会社全体で少なくとも3カ月に1回は経営計画を見直す機会を設けます。
    実績が目標どおりになっていなければ、何が問題なのかを検討し、場合によっては目標を修正します。目標を達成したときは、また次に向かってがんばろうという意欲が出てくるものです。

    Pointどこまで進んだか、進路をはずれていないかを
    経営計画によって確かめよう。
    経営のヒント
    行動計画のポイントとは?

    行動計画は、会社や業種、また数字目標の設定の難易度などによってさまざまですが、以下のような課題や目標を決めることが大切です。

    ・自分たちは何を社会に提供するのか?
    ・何を利益源にするのか?
    ・どんなお客さんを相手にするのか?
    ・期間内にどんなことを達成するのか?
    ・そのためにどのような行動をとるのか?

    このような行動計画と現実を照らし合わせることによって、社員は自分たちの今の状況が判断できるのです。

    2012年 5月 6日

    ~まずは「手元にいくら残す必要があるのか」から考えよう~

    人は無意識に利益計画を立てて行動している

    たとえば、あなたがお金をためて車を買うとします。100万円の車を手に入れるには、手元にそれだけの自由に使えるお金が必要です。お金をためている間も家賃はかかるし、衣類や食費にもお金はかかります。
    現在、貯金がゼロで、生活費が年間250万円かかるとします。すると、1年後に100万円の車を買うには年間の手取り給料が350万円である必要があります。
    このように個人の場合でも、手元に残すお金(100万円)が決まると、必要な収入(350万円)がみえてきます。学生がアルバイトでお金をためるのなら「車を買うために100万円ためる」→「生活費などを年250万円以内に収める」→「1年間働いて350万円以上稼ぐ」という計画を立てることが必要です。

    利益がないと何もできない

    会社の場合、年収がサラリーマンのように決まっていることはありません。したがって必然的に、手元に残すお金(利益)の計画を立て、それに基づいていくら稼ぐかを決めたり、出ていくお金を抑えたりすることになります。
    たとえばビルの購入費用に3億円かかるとします。頭金が10%とすると、そのための費用3000万円が必要となってきます。
    そのために、仮に、今期の利益を5000万円捻出しなけれぼならないとします。この利益額に諸経費や税金を加えた額が、必要な売上額になります。
    利益がないと会社は何もできません。そこで利益をいくら出すかをまず決めて、そのために経費や売上をいくらにするかを考えていく、これが「利益計画」です。経営計画は、会社にいかにお金を残すか、そのために何をするかを考え、実行に移していくことです。経営計画とは同時に利益計画でもあるのです。
    利益額を軸にして会社は活動します。経営計画の最も重要なポイントも、利益目標です。これを逆にして、売上目標を最初に決め、後から利益目標を決めてしまってはいけません。

    Point経営計画で最も大事なのは利益目標。
    先に売上目標を決めてはいけない。
    経営のヒント
    商品力からみた競争戦略は「CQS」

    競争戦略を考えるには、「商品力」という観点も非常に大切です。
    商品力は「CQS」の3つのカテゴリーに分けられます。
    すなわち「コスト(Cost)」「品質(Quality)」「スピード(Spead)」です。

    かつて吉野家やマクドナルドは、コスト(C)とスピード(S)を重視して、品質(Q)を落としたために、顧客離れが起きました。その3つをいかにバランスよく維持していくかということが、伸びる会社のポイントだといえるでしょう。

    2012年 5月 6日

    ~きちんとした経営計画のない会社が社会問題を引き起こす~

    会社は「果実」を実らせる木だ

    経営計画は、会社がお金を生むために立てるものです。ところが「儲け」のことばかりに執着すると、逆に会社にお金が入ってこなくなってしまいます。なぜでしょうか。
    会社を「果実のなる木」と考えてみましょう。果実は「商品やサービス」であり、果実をお金に換えることで会社が成り立ちます。
    果実が実るには、もちろん枝や幹や根も欠かせません。これらを合わせたものが「果実のなる木」です。枝も幹も根も、すべてを成長させることを考えなければなりません。
    「儲け」のことばかり考えるのは、枝や幹や根のことは放っておいて、果実をたくさん採ることだけを考えるようなものです。あるいは果実を本来の価値と無関係に高く売りつけようとすることです。根や幹や枝があってはじめて果実が実るのです。そのことを忘れると肝心の果実が実らなくなってしまいます。

    根・幹・枝も大事にする

    では「果実のなる木」の「根」とは何でしょうか。それは「責任」を果たすことです。
    食品会社なら安心して食べられる製品をつくること。航空会社なら安全に飛行機を飛ばすこと。これらはお客さんや社会に対しての当然の責任であり、まさに会社と社会をつなげている〝根″です。
    根っこに支えられた「幹」の部分は、会社の「組織」です。組織とは会社を構成する社員たちであり、その人たちによるチームワークです。企業文化や企業風土と呼ばれるものもここに含まれます。
    さらに幹の先には「枝」があります。ここは「競争」に勝つための戦略を担う部分です。どんな果実をつくって、いかにお客さんと結びつけるか、どうやって優れた果実を効率よく実らせるかなどを考え、実行していきます。
    しかし、いくらすばらしい競争戦略を考えても、組織がダメだと顧客を無視した商品しか生まれません。まして、使用期限の切れた材料を使ったり、整備不良の飛行機を飛ばしたりするなどして、会社の責任を果たさなければ、あっという間に信用を失います。
    経営計画を立てることとは、「責任」「組織」「競争」を大事にして、それぞれについての戦略を考えることでもあるのです。

    Point経営には「責任」「組織」「競争」の
    3方面からの戦略が不可欠だ。
    経営のヒント
    競争戦略は「MPA」で考える

    「責任」「組織」「競争」のうち、3つめの「競争」には商品やサービスと顧客を結びつける「マーケティング戦略」と、開発や生産も含めた顧客とのかかわり全般を考える「プロダクション戦略」が必要になります。
    そしてさまざまな会計数値をもとに「アカウンティング戦略」を立て、経営全体を支えていきます。

    このマーケティング(M)、プロダクション(P)、アカウンティング(A)についての戦略のうち、どれかひとつでもおろそかにすると、経営計画はうまくいかなくなるのです。

    2012年 5月 6日