経営計画入門講

~セルフマネジメントノート(5)――スケジュール管理し、行動のムダをなくす~

優先課題を記入して1日の終わりにチェックする

行動計画を実現するかどうかは、実際の行動にかかっています。そして、スケジュール表は、行動を自分で管理するためのものです。
社内情報ネットワークのなかに、社員用のスケジュール表をつくっている会社もありますが、これはアナログの方が使いやすいようです。
週間スケジュール表の基本的な使い方は、左の図にあるとおりです。この使い方も「会社のルール」ですから、前述のパート3に明記しておくといいでしょう。
スケジュール表の右側は一般的なダイアリーで1週間の予定、つまり会議、研修、健康診断、展示会等々、会社や仕事に関わるイベントを書きます。
このページは、社員が自分で好きなように活用できるように全体的に自由度が高くなっています。左の部分に、その週の社員本人にとっての優先課題(「セミナー準備」「企画書提出」など)を書くようにします。
優先事項には順位をつけ、終わったらチェックを入れます。
「今週は訪問件数、目標○○件」などと書いておいてもいいし、普通の「ToDoリスト」や備忘録としても使えます。

2カ月分のスケジュールがひと目でわかると便利

週間スケジュール表のほかに、月間スケジュール表をA4サイズ1枚にまとめます。今月分と来月分の2カ月分を、当月を先にレイアウトしてプリントアウトしたものを毎月全社員に配ります。
社員はそれを半分に折りたたんでホルダーに入れておきます。
これがあると、向こう2カ月間の会社のスケジュールがひと目でわかります。
各部門の活動やイベントの予定を全社員が把捉でき、社員が部門を越えた、全社横断的な考え方ができるようになることも期待できます。
同様にして、年間スケジュール表も作成します。これは年度の最初に確定している内容を記入して配ればいいでしょう。

Point
行動計画を社員が実践しやすいようにスケジュール表を工夫しよう。
経営のヒント
内部管理は事業活動ではない

経営がうまくいき始めると、会社の内部管理を熱心に始める社長がいます。
確かにそれも会社にとっては必要なことですが、内部管理は事業活動ではありません。

経営者の最も大事な仕事は、事業を伸ばしていくことです。そのためには顧客の要求を知り、ニーズに基づいた新たな事業領域を見つけていかなければなりません。
つまり会社の将来の仕事を見つけるのが社長の仕事です。

内部管理やマネジメントは、組織体制を工夫したり、それが得意な人に任せたりして、社長は本来の仕事に力を入れるべきです。

2012年 5月 6日

~セルフマネジメントノート(4)――会社のルールを徹底して浸透させる~

「行動計画」のつくり方を掲載

パート3には、会社のルールが載っています。会議の進行のルール、畜類のルールといった具体的な場面での社員のあるべき行動を示しています。「会社のルールブック」と考えればいいでしょう。
当社の場合は「経営計画のつくり方」をここに載せています。社員一人ひとりが行動計画をつくるためのルールと手順を次のように説明しています。

(1)「明確化する」「向上させる」「目指す」などのアバウトな言葉を使わない
(2)何を、どのように、いつまでに、どのくらいやるのか、その方法を書く
(3)自分が上司ならどんな質問をするかを常に考えて書く
(4)目標は具体的に書き、他部門の人がみてもわかるように必ず数字を入れる

また「やってはいけないこと」として「金品の授受の禁止」「顧客情報漏洩禁止」「会社情報漏洩禁止」「顧客誘引の禁止」「消費者金融への出入り禁止」「社員間での贈答の禁止」などを掲げています。その会社のルールを載せていけばいいのです。

さまざまな決まりに目を通す習慣をつける

日報や週報の書き方、電話の応対の仕方、会議の進行方法などの日常業務に関するルールも、明文化してパート3に入れておくと便利です。新入社員が入るたびに説明する必要もなく、覚えていない社員にはルールブックをみてもらえばいいのです。
社外の人に上司、会社、社長が批判されたときの対応も決めておきます。これも社員によっていうことがバラバラでは困るからです。社長の考えにもよりますが、「まず謝る」「ことの真偽、相手の真意を確認する」「うわさ程度であればはっきり否定する」「批判された人と社長にそのことを伝える」などはルールとして定めておくといいでしょう。
電話で会社までの道順を相手に説明する方法もここに書いておきます。新入社員でもそれを読み上げればいいし、訪問客も簡潔な説明を聞けるので迷わずに済みます。こうして社員は、会社のルールを常に目でみることができるようになります。

Point
日常業務からクレーム処理まで、さまざまなルールを明文化しておく。
経営のヒント
社員が自分のビジョンを書く

会社だけでなく、社員にもビジョンがあったほうがいいでしょう。自分が将来仕事を通じてこうなりたいという思い出もいいし、「今年のビジョン」を掲げてもいいでしょう。それを1枚の紙にまとめるのです。

そのときには仕事のビジョンと個人(家庭)のビジョンの両方を書いたらどうでしょう。仕事がうまくいかなければ家に帰っても悩むし、家庭がうまくいかないと仕事にも影響します。本当は会社と家庭の境目なんてないものです。仕事の喜びが個人の喜びにつながるようなビジョンなら理想的でしょう。

2012年 5月 6日

~セルフマネジメントノート(3)――今期の方針と経営理念~

会社の基本的な考え方を徹底して理解させる

セルフマネジメントノートの共通ページのパート2には、「今期の方針」および「経営理念」という全社員が知っておくべき会社の基本的な考え方を掲載しています。
「今期の方針」は、一般的にいえぼ経営計画のうち行動計画、または行動日標にあたるものです。「経営理念」はミッション、ビジョン、バリューです。それぞれの会社にはそれぞれの行動計画や行動目標、経営理念があるので、それらを載せればいいでしょう。
ポイントは「行動の背景となる会社の基本的な考え方」を示すことです。形式にこだわる必要はありません。
弊社では「100のフィロソフィー」に会社の基本的な考え方をまとめています。その見出しには「挨拶」「会社の成長」「価値観の共有」「サラリーマンはいらない」「上司と対等な立場でいる」「チームワーク」「プライド」「リーダーシップとは」「私の会社」などがあります。なお、その内容の一部を左の図に載せておきました。

内容が明確であればどんな形式でもいい

このほか「基本的な考え方」と題して、次のような内容のそれぞれについて箇条書きで示しています。
「成功10訓」「お客さまとのコミュニケーション」「安定顧客」「社員全員が知らなければならない数字」「私たちが必要としている社員」「ビジネスに成功する人の3つの秘訣」「真のリーダーとは」「給与/賞与について」「グッドジョブ賞」「社長と夢を語る会」「経営数字用語」「マーケティングの7P」‥
このうち「社員全員が知らなければならない数字」は「自分(部門)の売上目標数字、今日までの自分(部門)の売上数字の累計、自分(部門)が今年獲得したお客さんの数、これらの3つにおける目標と昨年との比較、部門全体の売上数字と自分(メンバー)の貢献度、全体の中での自分の順位」です。
また、会社の沿革や、社外の人に社長を紹介するときにどのように話すかということも、社員が知っておくべき基本事項として載せています。

Point社長の考えを社員に伝える方法は
いくらでも考えることができる。
経営のヒント
リーダーシップとは何か

リーダーシップとは、その人がいなくてもメンバーが目標に向かって行動するように導くことです。
社長がいなくなったとたんに手をとめる、サボりだすというようでは、リーダーシップを発揮しているとはいえません。

会社においてリーダーは社長だけではありません。
上司はもちろん、社員同士もお互いにリーダーシップを発揮できるようにしておく必要があります。
目標に向かって相互に動機づけをし、影響を与えあうことがリーダーシップだからです。社員一人ひとりが何らかの形で周りに影響を与えているのです。

2012年 5月 6日

~セルフマネジメントノート(2)――こういう内容構成になっている~

社員名簿や年間行事カレンダーなどもー冊にまとめよう

弊社のものを参考にしながら、セルフマネジメントノートの中身をみてみましょう

バインダーはA5サイズの6穴で、クリヤーファイルや名刺ファイルつき。これ一冊に仕事に必要な情報をコンパクトにまとめておくことができます。とじ込み用紙は、社長や幹部も含めた全社員の共通ページと、個人がそれぞれ自由に使うページがあります。共通ページ全体が、スケジュール表も含めた行動計画となっています。
共通ページのパート1は社員一覧表から始まります。100人未満の会社ならべージもとらないし、メンバーが一覧できて便利です。ここには氏名、所属部署、入社年月日と勤続年数が書いてあります。誕生日(月日だけ)も入れておくと、その日に「誕生日おめでとう!」と声をかけることができます。
続いては、組織図と、会社の年間行事カレンダーです。祝祭日や休暇だけでなく、賞与が出る日や研修予定日もわかります。

会社の方針、ルール、スケジュール表がびとつに

パート2は「今期の方針」と「経営理念」です。「今期の方針」は、単年度目標の大枠を示したり、その年の全社的なキーワードを載せたりします。「経営理念」は、何度か紹介したとおり「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3つです。
前項で紹介したような戦略目標、数字目標、行動目標をここに入れてもいいでしょう。
パート3は「基本的ルール」です。内容は、電話のとり方、会議のルール、インターネットの使い方のルールや、委員会活動、「ご法度」集など、社員なら当然知っていなければならない共通のルールを明記しています。
パート4はスケジュール表です。単なるダイアリーではなく、そのときの行動目標も書き込めるようになっています。
このように、社員が知るべきすべてを一冊にまとめてあります。なおパート1とパート4は白、パート2が青、パート3はピンクというように、用紙の色を変えるなど使いやすい工夫をしています。

Point
「「基本方針」「経営理念」「ルール」「情報」「スケジュール表」などを一冊にまとめよう。
経営のヒント
社員の時間単価を出してみる

社員が月30万円の給料をもらっているとします。限界利益を仮に人件費の3倍と考えると90万円です。
この利益を得るために必要な時間単価を計算すると、月20日出勤で1日8時間労働として約5600円です。

ここで社員に自分の仕事内容を振り返ってもらいましょう。
1時間5000円以上のお金を出して雇いたいと思うようなことをしているのか、と。
「自分で自分を雇いたくない」と思うようなら、セルフマネジメントノート=自己管理が不足しているのです。
もっと生産性を上げてもらうようにしましょ。

2012年 5月 6日

~セルフマネジメントノート(1)――バインダーにとじて、もち運ぶ~

もち運びしやすいつくりにして常にもち歩こう

経営計画には「利益計画」と「行動計画」の2種類があります。このうち行動計画は日々の業務活動に直接反映させるものなので、常にもち歩くべきです。
そもそも経営計画自体、つくって終わりというものではありません。机の中に放り込んだままにせずに、鞄の中にも手軽に入れられるようにするにはどうすればいいのか。そこが知恵の出しどころです。
そこで、行動計画をスケジュール表と一緒にA5サイズ (見開きA4サイズ) のバインダーにとじて全社員に配ろうというのが、この本での提案です。
いわば「携帯経営計画」です。弊社ではこれを「セルフマネジメントノート」と呼んで実際に活用しています。
スケジュール表は、毎日みたり記入したりするもので、社外にももち歩くものです。したがって「いつもみるように」といわれなくても、自然と社員が行動計画をもち歩き、目に入るようになるのです。

バインダー形式ならかさばらずに携帯できる

行動計画を一冊の本にまとめると、経営計画の会議のときしかみません。まして利益計画と行動計画を経営計画として一冊の本にまとめると、かさばって取り出しにくくなりますし、もち歩くこともできません。したがって、バインダー方式が一番便利ということになるのです。
専用のスケジュール帳をつくって、社員に配布する会社はよくあります。これもバインダー方式にすれば、自分でいろんなものをセットして使いやすいように工夫できます。
当社では狐自の林式のスケジュール表を、行動計画の最後に入れるようにしています。行動計画は、同じものを全員が同じ位置に、同じ順番でとじるようにします。
利益計画は、外に持ち出すと情報が潜れる危険があるのでバラバラにせず、A4サイズで一冊にまとめておけばいいでしょう。
なお利益計画の中でも利益目標など主要な目標数値は、行動計画の中に「利益目標」のコーナーを設けて書いておきます。

経営のヒント
社員が自分を管理する

アメリカに行くと、ホワイトカラーの生産性が日本よりはるかに高いことに気づかされます。
エグゼクティブのなると、昼休みはランチミーティングが当たり前。その代わり6時など決めた時間に仕事を終えてサッと帰ります。
それだけ自己コントロールがしっかりしています。

「セルフマネジメントノート」というネーミングには、「自分で自分を管理して生産性を上げよう」という意味が込められています。
生産性を上げるというのは、経営者的な考え方です。社員がそういう発想をするには「行動計画」が必要になるのです。

2012年 5月 6日

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