経営計画入門講

~お金がなくなれば会社はつぶれてしまうので、絶対にお金をからしてはならない~

減らすべき3つの勘定科目とは

「お金を増やすにはどうしたらよいですか?」という単純な質問に対して、「売上を上げる」あるいは「経費を減らす」と大抵の人は答えます。

お金は企業にとって大事な命の水。お金の支払いが滞れば、仕入先からの納入も止まるし、家賃の支払いもできません。当然、給与の支払いが滞り、大変な状況を迎えてしまいます。

左の図は、「貸借対照表」と「損益計算書」です。現金・預金を増やすには勘定科白の改善をする必要がありますが、そのためのわかりやすいテクニックをお教えします。

左の囲の貸借対照表をみてください。資産の部の売掛金以下は、限りなくゼロに近づければ、お金が増えてきます。

ただし、無形固定資産である「特許」や「商標権」などは積極的に増やすとよいでしょう。

売掛金は、物を売ったのにまだお金をもらっていないわけですから、締め日をしっかり決めて回収しなければなりません。

棚卸資産は、在庫になってお金が寝ている状態です。

貸付金は、回収できないものが含まれていないかを念入りにチェックします。ゴルフ会員権などで、必要のないものは換金するほうがよいでしょう。

いずれにしても、これらの勘定科目のうち、前述の3つを減らす計画を立てることも、経営計画のひとつです。

下から計画したほうがよいもの

次に、貸借対照表の右側は、負債や自己資金です。これは下から増やしていけばよいでしょう。

最も悪いのは、支払手形です。基本的にはなくすようにしましょう。

借入金に対しては、いろんな考え方があります。返済計画をしっかり立て、金利以上のビジネスができるのなら、お金を増やす手段のひとつとなります。

ここで一番注目すべきは、前受金です。前受金のところに 〝1円〟とありますが、みなさんの会社の前受金の残高がゼロであったら、1円でもよいから増やす努力をしてください。

前受金は、お金をもらっても、まだ売上に計上しなくてよいケースです。したがって、キャシユフローがとてもよくなります。最後に、損益計算書ですが、これは必ず下から計画していくようにしてください。

必要経費とは、社員が企業活動を行うのに必要な経費ととらえてください。

よって、必要以上に削ることはできませんが、それ以外のムダだと思われる経費はしっかりとチェックして、節約するようにしまししょう。

Point
勘定科目の数字は、それぞれの特徴を押さえて、効率よく改善しよう。

2012年 5月 6日

~「営業」「投資」「財務」の増減の組み合わせで分析しよう~

キャッシュは多ければ多いほどいいわけではない

キャッシュフロー計算書上の3つのキャッシュについて、さらに詳しくみていきます。

営業活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、利益を得たことで会社にキャッシュが入ってきたことを示します。マイナスの場合は利益が出ていないので、会社の経営状況はよくありません。

投資活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、それまでに投資した固定資産や有価証券などを売って、会社にキャッシュが入ってきたことを示します。必要に迫られて現金化したのなら、経営がうまくいっていないのかもしれません。マイナスの場合はキャッシュが出ていく代わりに投資をしているので、これからさらに成長するかもしれません。

財務活動によるキャッシュフローがプラスの場合は、借入か増資でキャッシュが増えたことを示します。借入が増えるのはいい状況ではありません。マイナスだと借入を返済する資金の余裕が生まれたのでしょう。

どのキャッシュフローがプラスかをみていく

この3つのキャッシュフローを組み合わせてみると、会社の状況がみえてきます。 まず営業活動によるキャッシュフローがプラスの場合、基本的に経営は好調です。しかも投資をしながら借入返済をしていればいうことはありません(左の図の「順調」)。

借入を増やして投資にあてている場合、今後の成長が期待できます(図の「これから」)。固定資産を売って借入返済をしている場合は、事業や財務体質のリストラ中の可能性があります(図の「踊り場」)。

営業活動によるキャッシュフローがマイナスの場合も、いくつかパターンがあります。 借入をしながら投資をしている会社は、盛り返す可能性があります(図の「しきり直し」)。しかし、投資活動によるキャッシュフローがプラスだと、資産を取り崩している状態です。その上財務活動によるキャッシュフローがマイナスなら銀行がお金を引き上げた可能性があり(図の「行き詰まり」)、プラスなら商売でお金が減る一方なのに、借金をしている状態です(左の図の「破産寸前」)。

Point
どういう理由で会社にキャッシュが入ってきたかを知ることが大切。
経営のヒント
キャッシュフロー計算書を活用しよう

キャッシュフロー計算書をつくらなければいけないのは、今のところ株式を公開している会社だけです。それ以外であえてつくっている会社は、銀行に求められたりしない限りはないでしょう。

しかし、ほかの決算書と同じように、キャッシュフロー計算書を一番活用できるのは、その会社の社長です。キャッシュの増減がわかる決算書はこれしかありません。
利益が出ていても、それが会社のキャッシュの保有につながっているのかどうかをキャッシュフロー計算書で確かめるようにしましょう。

2012年 5月 6日

~会社における、お金の出入りの内容を記録したものである~

キャッシュとは何か

キャッシュは通常、現金と同じ意味で使う言葉です。しかし、決算書における「キャッシュ」の意味については、おそらくほとんどの経営者は知らないでしょう。

キャッシュを日本語に訳すと「現金及び現金等価物」となります。「現金」には、文字どおりの現金のほかに当座預金、普通預金も入ります。「現金等価物」は会計上現金とみなされるもので、3カ月以内に満期となる定期預金、短期手形、コマーシャルペーパー(CP)、公社債投信などです。

よく年度末に「税金を払わなければいけないのに足りないので困っている」といっている社長の話を聞きます。これは会社のキャッシュの状況を把握していなかったためです。 キャッシュフロー計算書は、キャッシュが一定期間内(通常は1年度分)でどれだけ増えたり減ったりしたかを示す帳票です。 これをみることでお金がどのように会社を出入りしたかがわかり、自社におけるキャッシュの流れの傾向をつかんでおくことができます。

キャッシュの流れを3つに分けて考える

キャッシュフロー計算書では、キャッシュを「営業活動によるキャッシュフロー」「投資活動によるキャッシュフロー」「財務活動によるキャッシュフロー」の3つに分けて考えていきます。 いずれも会社にお金が入ってくれば、キャッシュフローはプラス、会社からお金が出て行けばマイナスになります。

営業活動によるキャッシュフローは、基本的には営業することにより得られる利益をさします。よって、多ければ多いほどいいということになります。 投資活動によるキャッシュフローは、主に土地や建物などの売買によるお金の流れを意味します。

財務活動によるキャッシュフローは、中小企業ではほとんどが銀行からの借入によるお金の流れを意味します。

このようにキャッシュフロー計算書では、どの種類のキャッシュフローがどう変化しているかをみることが大切なのです。

Point
「営業活動」「投資活動」「財務活動」による3つのキャッシュフローを押さえよう
経営のヒント
キャッシュがないとなぜ困る?

利益が出ない会社は困りますが、キャッシュがない会社はもっと困ります。

まず仕入先に払うお金がないので、仕入ができなくなります。売るものがなくなり、企業活動が停止してしまいます。社員への給料も払えません。
だからといって「利益は出ているからちょっと待ってくれよ」というわけにはいかないのです。

しかも手形が落ちなくなれば、銀行取引停止、倒産と最悪のコースをたどります。
仮に利益が出ていなくても、とりあえずキャッシュさえあればこんなことはならずに済むのです。

2012年 5月 6日

~決算書には出てこないが、重要な経営指標となる~

売上から変動費を引いたものが眼界利益である

限界利益は「売上高-変動費」で求められます。会社の利益をみる指標のひとつですが、損益計算書には出てきません。

変動費は「仕入十外注加工費」のことです。このうち「外注加工費」というのが損益計算書では表しにくいので、限界利益を載せている決算書はほとんどありません。なお製造業では外注加工費がかかることが予想されますが、流通業などの非製造業ではほとんどかからないため、変動費と仕入がほぼ等しくなります。したがって、非製造業の場合、限界利益は損益計算書の「売上総利益」とほぼ同じとみてさしつかえありません。

限界利益は、会社の利益を知る上で非常に重要な指標です。経営は売上を増やすことよりも、まず限界利益をいかに大きくしていくかを考えることといっても過言ではありません。経営計画で「利益をみる」というとき、まず最初にみるのは限界利益だということを覚えておきましょう。

売上と経費、利益の関係は?

経費は固定費と変動費に分けられます。変動費は売上に伴って増減する経費で、これを小さくするほど限界利益を大きくすることができます。

売上から変動費を引いたものが限界利益です。固定費が限界利益と同じであれば、損をしないかわりに会社に利益が残らない状態です。固定費が少なくなるほど、利益が増えていきます。変動費と固定費、限界利益、売上高の関係は、左の図のとおりです。 売上高から変動費を引いたのが限界利益で、さらに固定費を引くと損益分岐点が出ます。損益分岐点よりひとつでも多くの商品を売れば、利益が出ます。そして売上高から「変動費+固定費(販売費及び一般管理費)」を引いたものが営業利益になります。

変動費や固定費を減らすと損益分岐点が下がり、利益がより多く得られることがわかります。

なお、売上高を示す直線が「変動費+固定費」を示す直線と交差するところが「損益分岐点売上高」になります。

Point
「売上高-変動費-固定費=損益分岐点売上高」に常に着目しよう
経営のヒント
「一人あたりの生産性」とは

会社全体の労働生産性は「労働分配率」で見当がつきますが、「一人あたりの生産性」はどのようにみればいいでしょうか。

ほとんどが正社員だった時代なら、利益を社員数で割ればいいのですが、今はパートや派遣社員も増えています。人件費1万円あたりいくら稼ぐかという指標があるべきかもしれません。

また今まで社員だった人が独立して、同じ仕事を外注で受けたときの費用はどうでしょう。

外注加工費ですが、実質的には人件費ともいえます。人件費に対する考え方自体を変える時代になったともいえるでしょう。

2012年 5月 6日

~経営指標をもとに、安定的に儲けているか、人件費に問題がないかを確認しよう~

「自己資本比率」から安全性を分析

自己資本比率は、「総資本」に対する「自己資本」の割合をみたものです。銀行の安全性を示す指標としても使われているので、耳にしたことがある人も多いでしょう。自己資本は貸借対照表の右下にあります。この数値が高いほど安全性が高い、つまり会社がつぶれにくいといえます。

なぜ自己資本比率が高いと安全なのでしょうか。貸借対照表の右側をみるとわかりますが、自己資本が多いということは、その分借入金が少ないことを意味します。借入金が少なければ金利負担は少なくて済むのです。

また自己資本には、会社に最終的に残った利益(損益計算書の「当期利益」)が組み込まれていきます。利益が多いと、その分自己資本も増えます。利益をたくさん上げれば自己資本が増えるので、儲かっている会社の自己資本比率は高くなっていくのです。

「安全余硲率」から安定性を分析

売上高から損益分岐点売上高を引くと、会社にそのまま残る利益額を出せます。いわゆる〝余裕利益″が売上高に対してどれぐらいあるかを示すのが安全余裕率です。
この数値が大きいほど、不況にも左右されにくい体質の会社といえます。5%以上というのが健全な数値です。

「労働分配率」から生産性を分析

固定費の中で多くの比率を占める人件費に注目し、限界利益(損益計算書の「売上総利益」で代用)の中でどれぐらいの比率なのかを表すのが労働分配率です。

限界利益は売上から変動費を引いたものです。そこで人件費が多くを占めれば、その分会社に残る利益(営業利益や経常利益など)は減ってしまいます。たとえば労働分配率が70%だと、限界利益のうち70%が人件費ですから、会社には30%しか残りません。

労働分配率が高いほど労働力を活かすことができていないし、低いほど労働力を効率的に活用しているということです。

労働分配率が高すぎず、なおかつ社員一人あたりの給与が高いという会社は、それだけ収益力が高いということになり、理想的な姿なのです。

Point
自己資本比率と安全余裕率は大きく、労働配分率は小さいほうが望ましい。
経営のヒント
固定費削減には時間短縮を!

固定費は人件費のほか家賃や水道光熱費などがあります。
「固定費を削るにはどうしたらよいですか?」という質問に、大抵は人件費を削るしかないという答えが返ってきます。なかには、電気をまめに消すなどという答えもありますが、どちらも利益を上げることにはつながりません。

私はこのような場合、「時間軸を考えなさい」とお答えしています。
つまり1日かかっていた仕事は、半日で。半日の仕事は2時間でというふうに、人がかかわる仕事のスピードを上げれば、必ず利益率がよくなります。

2012年 5月 6日

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